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● 縫合糸肉芽腫とは |
手術を行う際に、縫合には縫合糸が必要となります。しかし、縫合糸はどんな種類であっても、生体には異物として認識され組織反応が生じます。縫合糸に反応して徐々に肉芽組織が形成されたものを、縫合糸肉芽腫とよびます。そして、肉芽腫の程度により様々な症状を呈することがあります。胃腸の炎症、消化管の閉塞、皮下脂肪織炎、腸穿孔、背腹部への瘻管の形成、尿管閉塞等です。治療は、原因となっている糸を完全に摘出すること、周囲の肉芽組織を摘出することが主体となります。
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症例 |
ミニチュア・シュナウザー、11ヶ月例、避妊済み(3ヶ月前に避妊手術をおこなっています)。
右腹部皮膚の腫脹がみられ、主治医にて診察を受けられました。細胞診の検査では炎症性の細胞が採取されました(化膿を意味します)。治療から7日目には患部に瘻管、排膿がみとめられました。内科的な治療反応が思わしくなかったため、当院を受診しました。
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検査所見 |
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【身体検査】
来院時、右腹部の瘻管、排膿がみとめられました。(図1)。
また、周囲の皮下組織は硬結していました。
【血液検査】
白血球数の上昇(17400/μl うち分葉核好中球92%、桿状核好中球2%、リンパ球4%、単球2%)と、C反応性蛋白(CRP;10.0mg/dl)の上昇が見られました。 |
【図1:身体検査】
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【MRI検査】
T2強調画像にて、右腎尾側に高・低信号が混在する腫瘤性病変をみとめました。(図2-1、矢頭)
腫瘤は右腹壁外側に浸潤し、体表の瘻管との連続性があると考えられました。(図2-2、矢印)
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【図2-1:MRI検査】
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【図2-2:MRI検査】
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治療および経過
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【手術所見】
右側尾側に肉芽組織状の腫瘤をみとめました。周囲は右側腹壁、膵右葉との癒着がみとめられました。(図3)
周囲組織との癒着を徐々に剥離したところ、腫瘤の内部に2つの縫合糸(絹糸)をみとめました。(図4)
腹腔内の洗浄をおこない、閉腹しました。
【図3:癒着部】
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【図4:縫合糸】
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【術後経過】
手術後は適切な抗生剤の投与をおこないました。瘻管は徐々に縮小し、経過は良好でありました。
【病理組織学的検査】
化膿性肉芽腫性腹膜炎との診断でありました。
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おわりに |
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今回の症例では、縫合糸反応性肉芽腫をMRIによって良好に描出し、診断および術前計画を立てることができました。MRI検査は炎症性病変の描出に優れていることから、本疾患の診断には非常に有用なツールであると考えられます。
本症例では、外科的処置をおこなうことによって良好な経過をたどりましたが、肉芽組織を摘出したのにも関わらず症状が再発・持続する症例もあります。その際には、繰り返しの手術や、免疫抑制剤の投与が必要となる場合もあります。そのため、絹糸やカットガットなど、特に肉芽腫性病変を誘発し易い縫合糸を使用する際には注意が必要です。縫合糸反応性肉芽腫の発生リスクを念頭に置きながら、手術部位や目的に応じた適切な縫合糸や縫合方法の選択をおこなうことが重要であると考えられます。
文責:獣医師 高地 毅
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