角膜潰瘍

TOP »  診療科 »  眼科 »  角膜潰瘍

角膜潰瘍

病気のお話をする前に、角膜についての基本的な話をしたいと思います。
角膜は眼球の前面に位置し、映像を網膜に届けるために透明性であり眼球内容物を守る強い膜として存在しています。 そのために角膜は約0.5mmという薄い膜であるにもかかわらず強度がありコラーゲン線維がきれいに密に並んでいる構造をしています。
角膜は表面から上皮、実質(コラーゲン線維)、デスメ膜、内皮の四層からなっています。

角膜潰瘍

眼の疾患の中でも角膜潰瘍はよく見られる疾患です。
一概に潰瘍と言っても、その程度は様々で、
軽いものから、上記の上皮(一番上の層)までの潰瘍を『表層性潰瘍』

表層性潰瘍
※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

実質まで到達した潰瘍を『中層性~深層性潰瘍』

中層性~深層性潰瘍
※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

デスメ膜まで到達した潰瘍を『デスメ膜瘤』

デスメ膜瘤
※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

角膜に穴があいた状態を 『角膜穿孔』といい、視覚を喪失する可能性がある重篤な状態です。

角膜穿孔
※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

それとは別に、角膜のコラーゲン線維が融解した(溶けた)状態の潰瘍を『融解性潰瘍』と言います。

融解性潰瘍
※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

どの潰瘍も痛みや充血、眼脂が認められ、治療が必要な状態です。
しかしながら特に危険な状態は、 既に角膜に穴があいている状態の角膜穿孔、穿孔する危険があるデスメ膜瘤、進行が早い融解性潰瘍です。
それ以外には見た目的には重篤な潰瘍に見えなくても、数週間から数ヶ月間治らない『自然発生性慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)』などがあります。

自然発生性慢性角膜上皮欠損(SCCEDs)
※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

角膜穿孔

※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

角膜に穴があいている状態ですので、眼球内にあるもの(主には前房水と言われる眼の中の液体)が眼の外に出て来ます。
液体だけでなく、虹彩(瞳を形づくる茶色い膜)や中には水晶体などが出てくることもあります。
眼の中の構造物が出てくることはもちろん大変なことですが液体だけでも出て来た場合には、眼球が虚脱し、眼内出血や網膜剥離、将来的に緑内障を引き起こし、失明にいたることもあります。
出来るだけ速やかに、穴を塞ぐ手術が必要になります。(もしくは自然に穴が塞がるのを待ちます。)

デスメ膜瘤

※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

角膜潰瘍が深くなり、内側の薄い膜しか残っていない状態です。
何時なんどき角膜に穴が開いてもおかしくない状態です。
角膜穿孔した場合には、失明の危険が高まるため、安静にして出来るだけ穿孔する前に潰瘍を修復することをお勧めします。

融解性潰瘍

※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

細菌感染やその他の要因で、角膜のコラーゲン線維を溶かす酵素が働き、固い角膜を柔らかく消化し、溶かしていく状態です。
進行が早いことが特徴で、半日で角膜が真っ白に混濁し柔らかくぶよぶよした状態になることもあります。
特にシーズーやパグ、ペキニーズなどの短頭種は融解性潰瘍を起こしやすいので要注意です。
酵素の働きを止め角膜の融解を止めないと角膜が穿孔することにもなりかねません。

SCCEDs(別名:難治性角膜びらん、無痛性潰瘍)

※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

角膜の表面の上皮が剥離した状態で、表層性潰瘍に分類されます。
通常、表層性潰瘍は1−2週間で治癒するはずですがいつまでも良くも悪くもならない潰瘍です。
この場合点眼だけではよくならないので、角膜表面の外科的処置が必要になります。

治療

角膜潰瘍の治療には、原則、点眼が必須です。角膜には血管が存在しませんので、飲み薬では十分に必要な薬を届けることが出来ません。
そのため直接的に薬を届けることが出来る点眼薬が必要になります。言い換えれば点眼できなければ治療が不十分となります。
また点眼だけでは対応できないような状況(角膜穿孔やデスメ膜瘤、SCCEDs)などの場合は手術や処置が必要となります。

角膜穿孔の手術前
※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

結膜をつかって角膜の穴を塞ぐ
手術後2ヶ月目
※クリックするとモザイクが外れます※タップするとモザイクが外れます

反対に、手術で対応できないような状態(角膜全体の融解など)では点眼治療が重要な役割を発揮することもあります。 また眼を掻くことにより悪化する場合には保護のためエリザベスカラーをつけてもらう必要があります。

個々の原因や症例、経過などにより治療方法は様々ですのでしっかりとした眼科検査を受けてください。

角膜潰瘍は眼科の疾患の中でも、よく遭遇し、オーナー様でも見つけやすい疾患です。早めに見つけて、早めに病院を受診するようにしてください。

つね日頃から眼を見る習慣と点眼できるようになっておくことが望ましいでしょう。

TOPへ戻る