前十字靭帯断裂

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前十字靭帯断裂

麻酔下検査として、関節鏡検査とCT検査についてお話しします。(麻酔をかける前には、ホームドクターもしくはVRセンターで血液検査を行い、麻酔をかけても問題ないかどうかを確認する必要があります。)

関節鏡検査は、直径1.9〜2.3mmのスコープ(動物の大きさにより選択)を関節内に挿入し観察するという検査であり、前十字靭帯断裂の仮診断が下された動物に対して、基本的にルーチンで行っています。

利点

  • 関節内構造部を拡大観察できること
  • 前十字靭帯の変性や部分断裂といった初期病変も把握し確定診断が可能なこと
  • 低侵襲で術後の回復が早いこと

欠点

  • 関節外(骨、筋肉、関節包の外側)や膝関節尾側の観察が困難なこと
  • 技術習得まで時間がかかること、高額機器など

※実際の関節鏡検査の流れを解説していきます

前十字靭帯断裂

麻酔をかけた後に股関節から足先までの
毛刈り及び消毒を行います

前十字靭帯断裂

次に手術台に保定し、滅菌ドレープで
手術部位以外を全て覆います

皮膚からの細菌が手指や器具に付着し、術野が汚染されないよう プラスチックドレープというラップのようなものを皮膚に貼り付けます。
下の写真、赤点線で囲んでいるところに貼っています。 前十字靭帯断裂

排泄ポート、カメラポート、器具ポートを作成し、
関節内の観察そして半月板損傷があれば
治療を行います

語句説明

排水ポート
関節鏡検査中は、関節内には還流液を常に流し関節内を洗浄しながら視野の確保を行います。 その時の汚れた液体を排泄するための部位を表します。
カメラポート
術者の目の代わりとなる、小さなカメラを入れる部位を表します。 その時の汚れた液体を排泄するための部位を表します。
器具ポート
術者の手の代わりとなる器具を入れる部位を表します。

前十字靭帯断裂

関節鏡所見①
滑車溝に発生した骨棘(こっきょく)
(骨の一部が骨端部付近で棘状に突出しています)

前十字靭帯断裂

関節鏡所見②
損傷していない十字靭帯(画面は後十字靭帯)は、張りがあり、キラキラと輝いている

前十字靭帯断裂

関節鏡所見③
断裂した前十字靭帯

前十字靭帯断裂

関節鏡所見④
内側半月板をプローブという器具で触知し、
損傷の有無を調べている

前十字靭帯断裂

関節鏡所見⑤
内側半月板の後角が損傷し、頭側に逸脱している

前十字靭帯断裂

上の写真の損傷箇所を囲っています

前十字靭帯断裂

術者、助手、機械出し、外回り、麻酔係が
各自の役割を行い、短時間で正確な手術を
実施するよう努めます

関節鏡検査にかかる時間は、動物の大きさや関節内の状態により変わりますが、おおよそ10~35分となります。
“検査”と名前は付いていますが、ご覧の通り関節鏡検査は“手術”であり、通常は、関節鏡検査直後に膝関節を安定化する手術も同時に実施していきます。
CT検査は、前十字靭帯断裂の検査として、ルーチンに行っている検査ではありませんが、整形外科的検査やX線検査で腫瘍を疑う所見があった場合には、必須検査となります。
特に、腫瘍が多い犬種や前十字靭帯疾患にかかりにくい犬種が、後肢跛行を主訴に来院し、膝関節に病変があった場合は、注意が必要です。
なぜなら腫瘍性疾患の治療方法や予後は、単なる前十字靭帯断裂と全く異なるためです。

前十字靭帯断裂

左:レントゲン 右:CT検査で骨断面を観察すると
骨融解が生じていることがわかる(赤点線で囲んだ領域)

前十字靭帯断裂

左:正常な右後肢
右:膝関節周囲に腫瘍がはびこっていることがわかる

CT検査の特徴は、X線を用いて構造物を断面状に観察することが可能なため、関節鏡検査では観察できない、関節周囲組織や骨断面の観察に適しています。
CT検査で腫瘍であることが分かれば、整形外科から腫瘍科へバトンタッチし、治療を行ないます。

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