異所性尿管
異所性尿管とは
若い女の子のわんちゃんでよくおもらしをする、それはもしかしたら異所性尿管かもしれません。
比較的「まれ」な病気ではあるものの、雄よりも雌で臨床症状を示すものが多い、猫より犬で多いというのは知っていただいていてもいいかもしれません。
ややこしい説明になりますがご説明させていただきますと、
尿管とは腎臓と膀胱をつなぐ管です。
尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱まで運ばれます。
膀胱は尿をためておく袋状の構造物であり、さらにその袋から
ペニス、あるいは膣につながる管、「尿道」が存在します。
膀胱~尿道の間には括約筋という尿道の周りを囲むような筋肉があります。
この筋肉が尿道を「きゅっ」と締め付けることによりいわゆる「おしっこのがまん」ができるのです。
尿管は本来イラストでお示しした膀胱の後ろのほう(膀胱三角)に開口するのですが、膀胱でないところに開口してしまうと、尿が持続的に流れでてしまい「お漏らし」という形で人間の目に映ることがあります。
これが異所性尿管で尿失禁がでるメカニズムになります。


飼い主さんから見て気づく兆候
排尿姿勢をとらない尿失禁をする、という症状で気づかれることが多いです。
元気食欲に問題があることはほとんどありません。
診断・治療
経過などから本疾患を疑った場合は、尿管の通常と異なる位置での開口を見つけることが診断になります。
尿管はとても細いために当院では造影剤とCT検査を組み合わせた排泄性病路造影を行い診断、および手術計画を立て、顕微鏡下で正常な場所への尿管開口部の移設手術を行っております。
“左側の壁内性異所性尿管”を診断した際の画像検査です。
オレンジの矢印が膀胱を超えて伸びている解剖学的に異常とされる「異所性尿管」です。



最後に
異所性尿管は致命的な疾患ではないですが、持続的な尿失禁の改善にて生活の質の向上が期待できるため、持続的に尿疾患があるなど、気になることがあれば一度検査を受けていただき、外科治療の可能性を模索させていただけたらと考えております。